【本気で改革を】

　全日本柔道連盟（全柔連）の現職理事であり東京都柔道連盟の会長職にもある人間が関係者の女性にわいせつ行為をしたとされる問題で、当事者の福田二朗氏（７６）が事実関係を認め５月２９日、全柔連に辞表を提出した。

　「申し訳ないし、辞めないと女性も納得しないだろう」福田氏は先日、テレビカメラもいる記者会見が終わった直後のぶら下がりでニヤニヤしながらそう発言。加えて「よっ、申し訳なかったな」程度の謝罪しか女性にはしていなかったことも明らかになった。柔道界全体に危機意識というものが無いに等しいことが分かる一コマだったが、それ以上に、福田氏本人（というより、福田氏の発言が柔道界全体の体質なのだろう）が今の時代に完全に取り残されていることを本人が自覚していないことに哀れさを感じた瞬間でもある。

　理事や役員が最も偉い風習は、腐った柔道界では見直されることはないのだろうか。どの理事の記者会見を見ていても心の底から謝罪や説明をしているとは思えない。目は挑戦的、態度は横柄、言葉づかいは雑で柔道界内部の話し方はこうなんだろうなあと思わせるものばかり。まあ、長年どっぷりとぬるま湯に浸かりきった体質を直すことはこの老人たちには無理な話だが。それよりも、特別チームと称する調査チームを発足したにも関わらず今回もまた対応の遅さを露呈していることのほうが“将来的に”問題だ。福田理事が行為を認め、辞意を表明しているにも関わらず処分の決定は６月１１日の理事会になる見通しだという。「説明責任は果たしたのだから処分決定は理事会まで待ってもいいんじゃないか。臨時の理事会を開くのもなかなか大変なんだよ」くらいにしか考えていないのではないだろうか。
　柔道界は暴力指導、助成金の不正と問題が続き、福田氏が辞任すれば全柔連では今年だけで３回目の不祥事。また、福田理事の大学の後輩にあたる上村春樹会長（６２）は「私は辞意を聞いていないが、辞めるのは残念なこと」と話していたが、理事長が理事の辞意を聞いていないわけがないだろう。
　柔道界が行うべきことは、膿はすべて出し、今柔道界が置かれている状況を客観的に捉えられる柔道界の息がかかっていない危機管理や人材育成のプロの意見を本気で取り入れないと、この業界は恥の上塗りを重ね続けることになってしまう。
　悪しき伝統と老害は、早期に排除していくべきだろう。

　全柔連は福田理事の辞表を受理。６月１１日の理事会で実質的な“永久追放”処分を決めることにしているが、世論の風当たりをようやく肌で感じた末の“緩慢”な対応に見えるのは私だけだろうか。

（嘉門　渡）