2018年03月25日【第112回】溢れる引っ越し難民

 「引っ越し難民」があふれている。トラックドライバーや若手労働者の不足などを背景に、日本特有の「春は移動の季節」であることから過剰な需要過多が続くからだ。結果、引っ越し代金が通常よりも2割から3割以上もアップし、受注お断りのケースさえ珍しいことでは無くなってしまった。

 全日本トラック協会によると、引っ越し需要が最も集中するのは「3月24日から4月8日」の2週間。通常よりも混雑すると見通すのは3月1日から4月20日までのおよそ2カ月弱になるのだという。ひとえに「4月1日付け」人事異動が集中し、新入生や新入社員もこの時期に移動するからだろう。

  人員を増やせば済むという単純な問題ではない。そもそも今の日本では人材が不足しているのだし、年間のわずか数週間で集中が終ってしまうのだから企業側だって簡単には人を増やせないのだ。

  もう10年近く前から東名阪の大都市圏域では類似の状況が発生していた。それが徐々に地方都市にまで拡大して、全国各地で同じ問題を抱えてしまったのだ。政府や行政はなにをやってきたのだろう。少子高齢化という言葉が言い尽され、どの業界でも人手が不足することが目に見えて分かっていたはずなのに、今になって問題が表面化する。宅配物の急増を受け、人手の足りない大手配送企業が料金の値上げに踏み切り、受注不可にまで至ったのはつい1年前のことではなかったか。

  国、業界、依頼企業のいずれもがこの問題に取り組まなかったツケがまわってきたといえる。「プレミアムフライデー」などという聞こえがいいだけで中身が何もない個人消費喚起のキャンペーンに血道を上げる時間があったら、人の生活に直結する深刻な状況にメスを入れる必要があったのではないか。

  喉元過ぎれば熱さを忘れる――黄金週間のころにはもう引っ越し難民など話題に上らなくなるだろう。しかし、人手や若手労働者の不足を背景にする深刻な問題は引っ越しや配達市場だけではない。医療、福祉、教育などあらゆる現場で悲鳴が上がっている。影響を受けるのは国民一人ひとりであることを忘れてはならない。